STYLE

 

緑あふれる細い路地をすすむと、その奥には暖かなライトに
照らされた雑貨店「agatha」と椎葉家の暮らしの空間がありました。

agatha 椎葉さん

 

 

 agathaオーナーの椎葉京子さんと、ご主人の隆雄さんが暮らす家は、ジョンソンタウンの築60年超えの「米軍ハウス」です。  無類の雑貨好きで、楽しい暮らしを提案するライフプランナーとして幅広く活動してきた京子さん。「そろそろ本気で、心の寄り所となる家を手に入れたい」と思ったとき、イメージしたのは「現代住宅よりも、昔懐かしい家」でした。

 

 「DIYや音楽を楽しみながら犬と暮らし、その傍で雑貨店を開くことが大事でした」という言葉のとおり、店舗は家のウッドデッキだった場所に自ら手を加えて、板壁の小屋をつくったものです。

 

 店内は、ハワイのラジオ局の音楽が流れる、どこかのんびりとした雰囲気。レジカウンターに京子さんの姿を見つけたら、そのすぐ奥に椎葉家のリビングやキッチンが見渡せることに気づくでしょう。所狭しと並ぶアメリカンポップな雑貨と、「特別なことは何もしていない」という力みのないディスプレイには魅力がいっぱいです。自宅で真似するコツを尋ねると、「お気に入りの雑貨を置く定位置を決めたら、そこにライトを当てて、小さなグリーンを置いてみて」とのアドバイスが。住居と店舗の境目がゆるく、暮らしが見えるオリジナルの空間だからこそ、会話がどんどん広がります。30分以上話しこんでいくお客さんも少なくなく、家の内装の相談に乗ることもあるそうです。

 

 しかしなぜ、ジョンソンタウンに家を借りようと思ったのでしょうか? 答えは、「ここにしかないまちなみに惹かれたから」。「理想的な建物でも、窓から見える景色が現実的で、イメージと違っていたらウンとは言えませんでした」。ジョンソンタウンの存在は隆雄さんが読んでいた雑誌で知り、初めて見に来たその日に申し込みを済ませたそうです。住んでみた感想は、「古い家だから、暑くて寒いとかはありますね。でも住まいとしては最高ですよ」。

 

 東京の下町育ちという京子さんは、ジョンソンタウンの裏路地にもどこか懐かしさを覚えるといいます。家々の間に塀がないので、「どこまでがうちの場所だろうかと、お互いに譲り合いながら暮らしている」とのこと。閉鎖的でないからこそ、近所付き合いは意識せずとも、いつのまにかできてしまうようです。

 

 

  

 

 

 家にはこれからも手を入れて、訪れる人が生活を楽しむためのヒントを得られるような空間にしたいそうです。そして「後々、この街に住みたいと感じてもらえたらいいですね。時間はかかるかもしれないけど、そんな提案もしていけたら」とのことでした。

(ライター 細井 安弥)