「平成ハウス」に手を加え、アートや古い家具の色合いと
空間を調和させたデザイナーのすまい。
デザイナー 吉本さん
もともとアメリカのトラディショナルカルチャーが好きだったという吉本多一郎さん。独学でグラフィックデザイナーの道にすすみ、近年はアパレルや音楽関係のデザインを多く手がけています。
「ジョンソンタウンでは、同業の気の合う人たちにも出会いました。みんな売れっ子で僕にも声をかけてくれるから、世田谷にいたときより、仕事の幅が広がりました」。
仕事場は、ご夫妻で住む「平成ハウス」のロフトです。「彼女がここを気に入って引っ越してきたので、はじめは都内まで距離があるな…と思いました。でも、すぐに慣れますね。仕事はネットがあればある程度は自宅でできるので、住環境がいいほうがいい」。奥さんは保育園で栄養士をしているため、在宅の多一郎さんからご近所付き合いが始まることもあるそうです。「住人同士でBBQしたり、キャンプに行ったり、馴染んでくると楽しくなってきました。前は外に飲みに行くことはあっても、家の周りで遊ぶなんて、なかったですから」。
東京の友人が「平成ハウス」に初めて来ると、外観と中の広さのギャップに驚くといいます。仲間を迎えるリビングには年代物風の家具や物が並んでいて、聞けばそれぞれに面白い由来がありました。「扉に見えるオブジェは、結婚式のときに木を組んで作りました。鍵をたくさん吊るして席次表にしたんです。その隣は義理のおじいさんが描いた日本画。半立体で、樹脂や金粉なども使われているらしいです」。
作品を引き立てるキャンバスのような白壁は、塗装職人の友達と、その会社でバイトした経験を持つ多一郎さんが丸3日かけて塗ったのだそうです。「柔らかな白にするため、少し黄と赤の色を混ぜて塗りました。本来の「平成ハウス」の壁(無塗装のOSB)もロッジ風で良いですが、僕はもう少し落ち着いた感じが好み。梁などはあえて塗らずもとの雰囲気も残しながら、落ち着いた印象に仕上がったと思います」。
家具は蚤の市で探すこともあるそうですが、「実家にあったアンティークのロッキングチェアが気に入ってます。でも、誰かさんはすぐ人にあげてしまおうとするんですよ」。インテリアで喧嘩しないように、多一郎さんはリビング、奥さんはキッチンとすみ分けて楽しんでいるのだとか。
「このタウンは、自分の時間を楽しむ大人が多いまち。まちに似合う街頭サインやグッズのアイデアも浮かんでいるので、いつかデザインをしてみたいです」
(ライター 細井 安弥)