このまちを、 まちごと借りている感覚で楽しんでいます。
ギタリスト 岩下さん
日本屈指のブルース・ギタリスト、岩下 潤さんは、東京都渋谷区からジョンソンタウンの「米軍ハウス」へ越してきました。「ブルースは戦前のアメリカ南部で育まれた、アコースティック・ギターの弾き語りから発展した音楽です。僕はあくまで1プレーヤーとして、ブルースの魂を体現していきたい」と岩下さん。
ただ、東京にいた頃は経営するギター教室や執筆の仕事に追われ、ライブ活動はやむなく休止していたそうです。再開のきっかけは、タウンのワンデーマーケット。「住人たちのお祭りを盛り上げたくて、ライブをやる気になりました。それに、このウッドデッキは昔のブルースマンが演奏していた場所にそっくり。最高のライブスペースです」。ネットで演奏の動画を見た海外の人からSNS経由で連絡がくるようにもなり、今では本場アメリカでのライブも毎年恒例になりました。
仕事がいそがしいのは相変わらず、という岩下さんですが、引っ越し後に始めたガーデニングや木工にも一切手を抜きません。家の周りは4年ほどかけて丹精した芝生と、星条旗カラーである赤・青・白の花々で彩られています。クリスマスが近づくと、イルミネーションも点灯されます。「近所の子も楽しみにしてくれています。はじめはこの「米軍ハウス」に住みたかっただけなのに、先輩住人に面白い人が結構いて「こんなこともできるじゃん!」と影響されました。住人が表現や発信することを楽しんで、その暮らしが絵になって、通りすがりの人とのコミュニケーションのタネになっている。そこがこのまちの魅力なんです」。
実は、岩下さんが住む「米軍ハウス」はタウンの目抜き通りにあり、本来は店舗向けに貸し出している物件でした。岩下さんは、住居として借りるからにはいつも綺麗にして、まちのにぎわいづくりに一役買おうと考えたそうです。その心意気で、今ではタウンの他の庭や芝生の手入れも引き受けているといいます。
「僕はこのまちを、まちごと借りて楽しんでいる感覚なんです。動機は、面白いかどうか、それだけですよ。何か頼まれると僕も勉強するから、また新しいことができるようになる。すごく楽しいですね。」
(ライター 細井 安弥)
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